なぜ双眼鏡が天体観測に適しているか
「双眼鏡で星空ウォッチング」白尾元理著 より引用
星空を眺めるというと思いつくのが天体望遠鏡です。ところが、実際に望遠鏡を使ってみると
上下さかさまの倒立像で、数十〜数百倍という高倍率のために、月のような天体でさえ、なか
なか望遠鏡の視野に入れられません。私も最初に望遠鏡を購入したとき、月を視野に入れる
だけでも30分もかかってしまいました。せっかく視野に入った月も、日周運動が倍率の分だけ
拡大されるため1分たらずで視野から逃げてしまい、すっかり見る気をなくしてしまいました。
双眼鏡が星空をながめるのに役立つということはあまり知られていませんが、双眼鏡は正立
像がえられる小型双眼望遠鏡といえます。双眼鏡は、小型、軽量、低価格で、使い方が簡単
という特徴があります。天体望遠鏡では、接眼鏡などの付属品、重い架台、三脚などがあって
初めてその性能がいかされます。最近は写真撮影向きにガッシリと作られている天体望遠鏡
が多く、小型望遠鏡でも20sをこえるのが普通です。最初は意気込んで出し入れしたのが、だ
んだん面倒になってやがて物置の奥で忘れ去られてしまうという運命をたどる望遠鏡が少なく
ありません。双眼鏡は倍率が低いという欠点があるものの、本体だけで気軽に星空が楽しめ
るのが魅力です。双眼鏡は、たくさんの光りを集めることによって肉眼よりも暗い天体を見るこ
とができます。また、肉眼にくらべて10倍の細部を見ることができます。ベテランの天文ファンと
いうと大きな天体望遠鏡を想像してしまいますが、彼らのそばには必ずといっていいほど双眼鏡
があることは意外と知られていないことです。
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