「北米インディアン生活誌」

C・ハミルトン編 横須賀孝弘・監修

和巻耿介・訳 社会評論社 より引用





多くのインディアン戦士自らが語った言葉を集めたもので、

豊かな自然と暮らし、伝説と信仰、狩猟と戦闘、白人との戦

いなど94の言葉が収められている。また註にはそれぞれ

の言葉の時代背景などの説明が詳しく紹介されている。

(K.K)








チーフ・スタンディング・ベア(スー族)の言葉

(本書より引用)


私は白人がやってくるまで植物、鳥もしくは動物の種が絶滅した

なんて話をまるで聞いたことがない。バッファローが姿を消してか

らしばらくのあいだ、まだたくさんのカモシカ(エダツノレイヨウ)の

群れが残っていたが、白人ハンターはせっせとバッファローを全滅

させてしまうとすぐ、その目を鹿に向けた。鹿がいまたくさんいる

は保護区だけだ。白人はこの大陸にもとからいる人間の命を「害

虫」なみに考えたように、野生動物の命もそうみなした。インディ

アンが徳とした草木も「厄介者」(ペスト)であった。ラコタ語のボ

キャブラリーには英語のこれにあたるものがない。インディアンの

自然に対する態度と白色人種のそれには大きな開きがあった。

これは自然生命の環境保護論者と非保護論者の差であった。

この世に生まれ育ったあらゆる他の生き物同様、インディアンも

共通の母なる大地に養われていた。だからインディアンはあらゆ

る生物に親しみ、あらゆる生命体にかれと同等の権利を与えて

きた。大地のあらゆるものが愛され敬われてきた。白人の哲学

は、「地より出でて地に属す物」、軽く見て、うとんじていい物だっ

た。みずからを優越した生物の地位に置き、それを僭称し、同じ

枠、万物の自然秩序のなかにいる他のものに、劣等の地位と称

号を与えた。こんな態度が万物に対する白人の行為を支配した。

生きる価値と権利はかれだけのものであり、ゆえにかれは無残に

破壊した。森林は伐りとられ、バッファローは皆殺しにされ、ビーバ

ーは全滅に追いやられ、その見事に築造されたダムはダイナマイ

トで吹き飛ばされ、大洪水のもとをつくり、さらなる荒廃を招いて、

空の鳥でさえ鳴かなくなった。大気に甘い香りを放っていた生い茂

る大草原は掘り返された。わたしが子どものころにはまだ生きてい

た泉、川、湖は涸れてしまい、すべての人々が衰退と死の厄にさ

らされた。白人は、この大陸にもとからあった万物を絶滅させる

シンボルたらんとしてやってきた。白人と動物のあいだにこころの

つながりはなく、動物たちは白人が近づくと逃げるようになった。

なぜなら、両者は同じ大地に住むことができないのだから。





インディアンはその風習や伝統とは全く対照的な白人の流儀を

受け入れることができず、場合によっては受け入れを拒否された

ために、みずから怠慢の汚名を得てしまった。白人はそのごまか

しと弱さのためにインディアンの信頼を完全に失ってしまい、そん

な白人の失望のゆえに、なおさらインディアンは自分の部族流を

通すほうを好んだ。かれは昔ながらの風習や宗教にしがみつき、

それを変えようとしても変えられなかった。だから、最も活動的な

暮らしに生きて、すぐれて高い肉体の完成を遂げてきたインディア

ンを最も性格的に怠慢ときめつけてしまったのだ。じっさいは間違

いなのだが、こんな定義が一般人のこころに植えつけられている。


 
 


本書 序 C・ハミルトン より引用


この本の筆者は、いずれもアメリカ・インディアンであります。ここには、

石器時代最後の人間が、機械文明時代最初の人間と闘った英雄的

行為や、信じられないようなかれらの風習、儀式及び狩猟や戦場の

冒険、さらには白人の侵略者がもたらした未知の生活を受けいれる

ために払われた、かれらの悲壮な努力について述べられています。

テカムセ、ブラック・ホーク、シッティング・ブル、チーフ・ジョセフ、ジェ

ロニモといった偉大な戦士たちも、語り手のひとりとして、何度か登場

してきます。白人の旅行者や兵士、宣教師などが書いたインディアン

に関する記録には、かれらの本質を衝く十分な知識や理解が、ほとん

ど示されていません。インディアンは異民族の前では、真実は肚の底

にしまって堅く口をとざし、喋ってもいいと思えるような些細なことしか

口に出さなかったものですが、ここでは、かれらがみずから筆をとっ

て、白人には必ずしも口あたりの良くない真実をも語っています。こう

したインディアンの著者が、きわめて重視されるのは、過去の歴史

に対する新しい見解を提供するとともに、かれらと白人侵略者との闘

争の歴史の真相に、鋭い焦点をあてているからであります。なぜ、白

人の進出に激しく抵抗したか、なぜ、狩猟地を放棄するより、死を選

ばねばならなかったのか、その理由をインディアンたちは語っている

のです。


 


目次

プロローグ

第1章 火を囲んで

スー族の求愛 ブラック・エルク(スー族)

純潔の乙女の宴 オヒエサ(スー族)

オジブワ族の恋の歌 氏名不詳(オジブワ族)

結婚に関する部族伝来の教え 氏名不詳(ウィネバゴ族)

ラコタ族の家庭 チーフ・スタンディング・ベア(スー族)

インディアンの教育 オヒエサ(スー族)

大自然の中のホピ族 ドン・C・タライエスバ(ホピ族)

平原の毛布信号 チーフ・スタンディング・ベア(スー族)

オジブワ族の絵文字 チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)

大いなる伝説 チーフ・エリアス・ジョンスン(タスカローラ族)


第2章 獲物を追って

インディアンの狩猟法 オヒエサ(スー族)

スー族の少年狩人 オヒエサ(スー族)

厳しい狩猟の掟 チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)

鹿狩りの儀式 フレイミング・アロウ(プエブロ・インディアン)

鹿狩りの四法 チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)

熊討ち チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)


第3章 原野のスポーツ

スー族の子供のゲーム オヒエサ(スー族)

ホピ族の子供の遊び ドン・C・タライエスバ(ホピ族)

東部諸部族のゲーム チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)

平原インディアンのスポーツ ウッドゥン・レッグ(シャイアン族)

ウィスキー浮かれ チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)

禁酒の訓練 チーフ・サイモン・ポカゴン(ポタワトミ族)

炉辺のユーモア オヒエサ(スー族)


第4章 偉大なる神々

神助を求めて エドワード・グッドバード(ヒダッツァ族)

オジブワ族の神 チーフ・カーゲガガーボー(オジブワ族)

明けの星に捧げる聖歌 タヒラッサウィチ(チョーイ・ポーニー族)

太陽の踊り チーフ・バッファロー・チャイルド・ロング・ランス(クロータン族)

霊との交流 チーフ・バッファロー・チャイルド・ロング・ランス(クロータン族)

呪術による治療 チーフ・プレンティ・クー(クロウ族)

魔術信仰 チーフ・カーケワクォナビー(オジブワ族)

スペリオル湖の人肉食 ウィリアム・ウォレン(オジブワ族)

麻薬ペヨテの効用 ジョン・レイブ(ウィネバゴ族)

埋葬の習俗 チーフ・カーケワクォナビー(オジブワ族)

死者の楽園 ウィリアム・ウォレン(オジブワ族)


第5章 戦闘

少年期の戦闘訓練 オヒエサ(スー族)

クー賞 チーフ・プレンティ・クー(クロウ族)

棍棒と呼笛作り イエロー・ウルフ(ネ・ペルセ族)

敵状偵察 チーフ・スタンディング・ベア(スー族)

戦闘準備 ウッドゥン・レッグ(シャイアン族)

頭皮の剥ぎ方 チーフ・カーケワクォナビー(オジブワ族)

馬盗人 チーフ・プレンティ・クー(クロウ族)

火刑 ウイリアム・ウォレン(オジブワ族)

老チーフの計略 ピーター・D・クラーク(ワイアンドット族)

アイオワ族の騎士道 ブラック・ホーク(ソーク族)

死を求めた老戦士 ウィリアム・ウォレン(オジブワ族)

イロコイ五部族の起源 チーフ・エリアス・ジョンスン(タスカローラ族)


第6章 植民地時代の戦場

蜂の警告 ピーター・D・クラーク(ワイアンドット族)

白人の到来 ジョセフ・ニコラー(ペノブスコット族)

最初のイギリス植民地 チーフ・フライング・ホーク(スー族)

清教徒の侵入 ウィリアム・エイプス(ピーコット族)

フィリップ王の戦争 ウィリアム・エイプス(ピーコット族)

インディアンへの細菌戦 チーフ・アンドルー・J・ブラックバード(オタワ族)

ミシリマキナックの占領 ウィリアム・ウォレン(オジブワ族)

チーフ・ローガンの弁舌 チーフ・ジェームス・ローガン(カユーガ族)


第7章 アメリカ人と戦う

英国に味方して チーフ・ホポカン(デラウェア族)

クロフォード大佐の火刑 ピーター・D・クラーク(ワイアンドット族)

平底船の攻撃 ピーター・D・クラーク(ワイアンドット族)

北西部の英軍戦略 ブラック・ホーク(ソーク族)

カナダへの進軍 ウィリアム・エイプス(ピーコット族)

中立を守ったオジブワ族 ウィリアム・ウォレン(オジブワ族)

わが土地を守れ テカムセ(ショーニー族)

ウェザフォードの降伏 ウィリアム・ウェザフォード(クリーク族)

ブラック・ホークの戦い ブラック・ホーク(ソーク族)


第8章 幌馬車と鉄の馬

列車襲撃 チーフ・スタンディング・ベア(スー族)

ワゴン・ボックスの合戦 ファイア・サンダー(スー族)

メキシコ人と戦う ジェロニモ(アパッチ族)

ネ・ペルセ族の逃避行 チーフ・ジョセフ(ネ・ペルセ族)

最後の抵抗 イエロー・ウルフ(ネ・ペルセ族)

降伏を訴える チーフ・ジョセフ(ネ・ペルセ族)

シッティング・ブルの勇気 オヒエサ(スー族)

シッティング・ブルの主張 シッティング・ブル(スー族)

カスター将軍の過信 チーフ・プレンティ・クー(クロウ族)

対カスター戦 アイアン・ホーク(スー族)

最後の略奪 ウッドゥンレッグ(シャイアン族)

カスターと闘った理由 シッティング・ブル(スー族)

幽霊踊り マッシー・ハジョー(スー族)

ウンデッドニーの虐殺 ターニング・ホーク、その他(スー族)


第9章 白人の道

白人の神秘な呪術 オヒエサ(スー族)

白人の性格 チーフ・プレンティー・クー(クロウ族)

白人の戦争 ブラック・ホーク(ソーク族)

絶滅の象徴 チーフ・スタンディング・ベア(スー族)

白人の欠けた分別 チーフ・カーケワクォナビー(オジブワ族)

東部の旅 ブラック・ホーク(ソーク族)

セントルイス万国博 ジェロニモ(アパッチ族)

フランス人の印象 マウンガダウ(オジブワ族)

祖母なる国イギリス訪問 ブラック・エルク(スー族)

インディアン学校 チーフ・スタンディング・ベア(スー族)

殺されたインディアン神学生 チーフ・アンドルー・J・ブラックバード(オタワ族)

白人のデタラメ宗教 チーフ・スポッティド・テイル(スー族)

チェロキー語のアルファベット ジョン・リッジ(チェロキー族)

正義を求めて チーフ・ジョセフ(ネ・ペルセ族)

エピローグ ウィリアム・J・ハーシャ


註(出典と各筆者の経歴)

解題(横須賀孝弘)

訳者あとがき


 


監修はNHKのテレビディレクターとして、「ウォッチング」「地球ファミリー」「生きもの地球

紀行」などの自然番組を中心に制作しており、著作家として「ハウ・コラ 大平原のスー族」

「北米インディアン生活術」。訳書に「大平原の戦士と女たち」「北米インディアン悲詩」(絶

版)、監修本に「北米インディアン生活誌」がある。尚、著者の横須賀孝弘さんは北米イン

ディアンに関する約350冊の文献の目録(1951-1998)を編集しており、彼らインディアンの

実像を理解しようと思う人たちには参考になるであろう。








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