「ベロボディアの輪」
シベリア・シャーマンの智慧 オルガ・カリティディ著
管靖彦訳 角川書店 より引用
本書はカルロス・カスタネダがヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファン との出会いを描いた一連の書籍のロシア版と高く評価されているもの で、シャーマニズムの本場とも言えるシベリアの古代の叡智を見事に 伝えることに成功している。本書の原題は「聖なる伝統の輪に入る」 という意味を持ち、著者の経験した驚くべき体験を通して読者を、聖な る王国「ベロボディア」へとひきつけてゆく。 (K.K)
1997.7/25 「インディアンの源流であるアニミズムとシャーマニズム」
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(本書 より引用)
「今日でも、そのつながりは依然として生きつづけている。けれども、数千年の時の経過と 共に、それは次第次第に隠されたものとなっていった。ほとんどの僧侶にとってすら、その 記憶は主として伝説や神話の形で表される。現在、聖なる知識が保存されている古代の 場所にはさまざまな名前が付与されている。ベロボディアはその一つだ。聖なる知識の保存 は最初の移住を余儀なくされた時から霊的な選民たちの目標だった。かれらが後に残った のはそのためなのだ。しかし、聖なる知識が真に生き残っていくためには、新しく浮上する 文化の社会生活に絶えず統合されなければならない。そのようにして長期間それは生き 残ってきたのだ。あなたに話した最初の文明の移動はほんのはじまりにすぎなかった。以 来、多くの集団がシベリアに彷徨いこみ、消滅した文明の神秘的なパワーに影響された。 アルタイ地域は新しい文化誕生の沸騰する大釜となった。人々の流れがそこから分離し、 多くの異なった方向へと遠くまで広がっていったのだ。その流れの一つが現代のイランの領 域へと辿りつき、そこで、かれらが携えていった聖なる知識がゾロアスター教として誕生した。 後にこれと同じな流れがその知識の多くをキリスト教へと伝えた。別の流れは現在のインド やパキスタンへと移住し、その地での社会の確立がヴェーダーンダの伝統の富を生み出し た。最初の知識の場にシャンバラの名前を与えたタントラ仏教は何世紀にも亘って、その 知識と直接的な交流を果たした。西に赴いた人々は、ケルト人として知られるようになり、 ドルイド教の儀式を通して、共通の源に結びつけられた。このように、アルタイに発するこの 古代文明の神秘的遺産は世界中の多くの偉大な宗教の最初の源泉となったのだ。これらの さまざまな伝統の内部には、それぞれベロボディアと直接触れたことのある人間がつねに 存在していた。時折、ベロボディアに由来する知識はあなた自身の文明にも開示されてきた。 そのようなことは世界大戦のような人類の真の危機の瞬間に起こった。今また聖なる知識が あなたがたに開かれつつある。人類が蓄積してきたパワーとエネルギーがもろもろの崩壊を 引き起こす潜在性をもつようになっているからだ。ベロボディアが現代人の意識に接近可能 になりつつあるのは、これまでとはちがった生き方を示すことによって、人類を崩壊から守る ためなのだ」 ここまで話すと男は黙りこみ、足元の地面に幾何学的な図形を描きはじめた。私は彼の話に 含まれている驚くべき意味に心を奪われ、この場に存在することにほとんど意識を集中できな い。彼の言ったことについては、こちらからもたくさん言いたいことがあり、すぐにでも議論した いというほとんど抗しがたい欲求を覚えるが、その欲求と必死に戦い、自分が今いるこの場に 全神経を集中しようとする。私の内部で起こっている葛藤を彼が一部始終了解していることは、 彼の顔の表情を見れば分かる。すると、彼がまた話しだす。今回はとてもゆっくりしたしゃべり 方だ。 「私がしゃべったことが伝説か現実かを決める最終的な決定権はあなたに委ねられている。 しかし、実際には、それを真実とみなす以外に方法はないのだ。この真実は一枚ずつ花弁を 開きながら、美しい霊性の秘宝を惑星全体に広めてきた花なのだ。この花が今まさに咲き誇 り、あらゆる知識の開花として理解されようとしている。そうしたことが起こるのはもうまもない だろう。あなたは好きなように反応すればよいのだ。戦う道を選んでもよい。あるいは、聖なる ものの真髄を迎え入れ、美しいいのちの輝きに身を委ねることもできるのだ」
ドミトリエフの手書きの文章はここで終わっていた。
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著者のことば 本書より引用
本書は最近、私の身に起こった出来事をつづった真実の物語である。シベリアの ノボシビルスクにある精神病院に勤務する私は、ある日、心に悩みを抱える若者 の訪問を受けた。それが事の発端だった。次々に不思議な出来事が重なり、歴史 的に神秘的な場所とみなされているアルタイ山に導かれた私は、そこでシャーマン がするような驚くべき体験をし、数々の神秘的な啓示を授けられたのである。本書 に記載されている出来事は、ほんのちょっとした例外を除いて、ここに述べられて いる通りに起こった。多少の修正を加えてあるが、それは家族や友人のプライバ シーを守るためにしたことである。本文より二字下げで書かれている箇所は私の 日記から直接転載したものだ。会話は記憶の糸をたぐってできる限り忠実に再現 した。本書に使われているさし絵はアルタイ山の古代の墓から発掘された工芸品 の装飾やミイラにほどこされた刺青から取ったものである。 オルガ・カリティディ
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目次 序章 復活の儀式 第一章 狂気の船 第二章 老シャーマンの死 第三章 死の霊 第四章 アルタイへの旅 第五章 切り裂かれたドラム 第六章 シャーマンの治癒 第七章 精霊の湖 第八章 ベロボディア伝説 第九章 アンナの癒し 第十章 音楽の力 第十一章 馬の背に乗って、走り去れ! 第十二章 自己を形作る方法 第十三章 謎の物理学者 第十四章 患者の自殺 第十五章 人生の第一法則 第十六章 魂の双子 第十七章 若鹿 第十八章 聖なる伝統の源 終章 蘇る真理の火と光 訳者あとがき
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2012年1月20日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 |