ハブ捕り名人 南竹一郎さんの言葉
(本書より引用)
こんなこともあった・・・、夜の山でつかれて眠っとったら、サラサラ、ポキッ、っ
て音がして目がさめた。木の根を枕に寝とったから、小さい音もよくきこえたんじゃ。
それで音のする方を見たら、ダイバン(おおきい)、ハブが手のとどきそうな距離か
らワシの顔をのぞきこんでおった。ものすごい山奥だったもんだから、人間を見た
ことがなくて興味を持って近づいてきたんじゃろ。
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昭和35年(1960年)ごろから、奄美の森はどんどん伐採されたっチョ。それから
奄美の生物は、めっきり少なくなった。犠牲になったのは、森に棲んでいる生き物
だけではないっチ。大雨がふると、裸になった山肌から赤土が川に流れだして、
川も海も真っ赤になる。ワシの好物の沢のカニも、手長エビも今はどんなに減った
ことか。海のサンゴもボロボロと死んでしまった。
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ハブを退治するために外国産のマングースが山に放された。もうずいぶん前の
ことじゃ。今では奄美の森を大きな顔をして歩きまわっとる。どうやらマングースは、
ハブを襲わずにクロウサギなんかの奄美の大切な住人を襲っているみたいじゃ。
それでこんどはマングースを退治しようということになったっチョ。困ったもんじゃ
ヤー。人間がやることはなかなかうまくいかんチ。自然の中で、一番の悪者は人間
じゃ。奄美の森の生き物は、なんにも悪いことをしないっチョ
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ハブは憎い奴じゃ。でも奄美の森はハブが守ってきた。昔の島の人は、山を
畏れていたっチ。かんたんには山に入らんかった。だから、奄美の森の仲間は
今まで生きのこってこれたにちがいないっチョ。奄美の森からハブがいなくなっ
たら、島の値打ちは半分じゃヤ
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