「自然のこえ 命のかたち カナダ先住民の生みだす美」

国立民俗学博物館 編 昭和堂 より引用








カナダ先住民と言ってもオジブワ、モホーク、イロコイ、ヒューロン族など

アメリカ国境をまたがっている部族も存在するが、本書は主に北西海岸

(ハイダ、トリンギット)と極北(イヌイット)の先住民の芸術品を紹介している。

芸術品と言ってもただ単なる羅列に終わることなく、その意味、そして過去

から現代までの歴史を踏まえながら紹介しており、一つ一つの芸術品に刻

まれた彫刻や文様を通して彼らの精神文化の一端を知ることができる。

この文献は2009年9月から12月に大阪・国立民族学博物館にて開催さ

れた特別展にて出品されたもので、カナダ文明博物館からも多くの出品が

なされている。

(K.K)


 











カナダ文明博物館巡回展開催にあたって


カナダ文明博物館 館長 ビクター・ラビノビッチ



国際巡回展「カナダの先住民族・・・・カナダ文明博物館の逸品」は、カナダ先住民の多様で豊かな

文化を包括的に紹介しています。カナダ先住民の諸文化は過去1万年以上に渡って持続し、発展

してきました。ここで紹介するカナダ先住民が作り出したものは、人類史を主要なテーマとするカナ

ダ文明博物館のコレクションからえりぬかれた逸品です。これらの至宝を日本の皆様に紹介できる

ことは、大変光栄であるとともに、私たちの責務であると考えます。



この巡回展示で紹介するものの多くは、カナダ先住民がはるか昔に作ったものですが、それらは

失われた文明の遺産というわけではありません。これらのものは、今日のカナダ国民のなかで

1000万人以上の人口を有するファースト・ネーションズ(北米先住民)やメイティ(北米先住民と

ヨーロッパ人との間に生まれた人びとと、その子孫で独自の文化を形成した先住民)、イヌイット

(極北の先住民)が引き継ぐ文化遺産でもあるからです。



カナダ先住民ははるか昔から現代まで、紆余曲折した道のりを歩んできました。彼らの歴史的な

歩みは、困難を伴いつつも、創造的で、魅力的でした。その本質は、彼らの文化伝統の力強さと

回復力、大地との身体的・精神的なつながりにあるといえましょう。こうした歴史のテーマも展示の

重要な部分です。



また本展示では、カナダ先住民に特徴なものを紹介しています。忘れてはならないのは、それら

が彼らだけの文化遺産ではなく、人類全体の共有財産のひとつであるという事実です。純粋にそ

の美しさや精巧さを楽しんでいただくこともできますし、制作年代や場所、作り手の生活や感受性

なども学んでいただくこともできるでしょう。



多様な文化的背景において作られたものを目の前にすると、思わずわくわくし、心躍ってしまい

ます。世界とは何か、人類とは何か、といった問いについて、それまでにない視点で理解するこ

とができるようになるからです。さらに、自分たちの文化に固有な慣習や思考方法、信仰とは

ちがった視点で理解することができるようになるからです。なによりも重要なものは、「もの」が

他者の文化の理解と敬意の礎となってくれることです。



このたびの展覧会と本書を通じて異文化を楽しんでいただくとともに、思考を刺激する何かに

出会っていただけることを願っています。展示を直接ご覧いただける皆様には、カナダ先住民

が生みだした物質文化のすばらしさや多様性に、畏敬の念を抱いていただけることと確信し

ています。さらにカナダ文明博物館では、カナダとカナダ国民に関するたくさんの物語を紹介

する画期的な展示が皆様をお迎えいたします。



2009年9月


 
 




「自然と生命を尊ぶ共生の思想・・・・カナダ先住民の環境、歴史、そして生き方」

岸上伸啓 より抜粋引用




今回の展示は、カナダ文明博物館の巡回展「カナダの先住民族」と国立民族学博物館所蔵

のカナダ先住民資料から構成されている。前者は、カナダ先住民の逸品約150点からなり、

上述したようなカナダ先住民の文化の歴史かつ地理的な多様性を紹介するものである。



日本国内では初公開となるこの巡回展の貴重な資料を核とし、これまで民博の研究者がカナ

ダにおいて収集してきたイヌイットと北西海岸先住民の版画、滑石彫刻、木製品などアート作

品を併設展示し、それらの意匠や文様、色彩、形態など芸術的な表現を通して、先住民文化

のユニークさとすばらしさを紹介する。また、製作者が暮らす地域の自然環境や社会の姿も

映像・写真を使って提示する。



とくに、後半部では、対照的ともいえるイヌイット文化と北西海岸先住民文化の違いを示すと

ともに、それらに共通する人間と動物の関係など世界観を紹介する。カナダの先住民社会で

は、人間と動物の関係はたんなる「捕る・捕えられる」という関係ではなく、人間は捕獲した動

物の霊魂に敬意を表し、適切な儀礼をおこなうことによって、動物を再生させる役割を担って

いる。すなわち人間と動物の関係は生・・・・死・・・・再生という循環にもとづく互酬的な関係で

ある。



また、多くの先住民は、すべての動物には霊魂が宿っており、その霊魂は人間のものと同じ

であると考えている。したがって、人間はクマやカリブー(トナカイ)の姿に変身できるし、その

逆も起こりうる。人間も動物も同様に家族をもち、カリブーも家に帰れば毛皮を脱ぎ、人間と

同じ姿で生活を送っていると考えられている。つまり、人間と動物(広義の自然)は別々の

存在ではなく、一体化した存在でありつ言い換えることができる。したがって、人間が動物

(自然)を無意味に傷つけることは、人間自身を損なうことでもある。



これらの考え方は、イヌイットや北西海岸先住民の神話や昔話、アート作品の間において

広範に認められる。それは、すべての生命や自然を尊ぶ共生の思想であり、グローバル化

が進み、技術が発達した現代社会では等閑視されがちな考えであろう。カナダ先住民文化

の展示および本書が、今一度、人間と自然の共生のあり方を再考していただく契機となるこ

とを願っている。




 




「北西海岸先住民のアートの世界 『象徴の森』のルネッサンス」斎藤玲子 より抜粋引用



18世紀の来訪者が驚嘆したように、北西海岸地域では儀礼具はもちろん、生業の道具から

日用品に至るまで、多くのものに文様が描かれ、彫刻が施されている。それらの理解には、

社会や世界観を知ることが必要だろう。



彼らの社会には階層があり、上流の裕福な者が所有する家屋に数家族が同居していた。社会

の基本的な単位は、同一の家屋に住む構成員からなる「家」と、それが集まった「村」であった。

さらに、人びとは出自にもとづく「半族」や「氏族」という集団にも属しており、それらの集団は漁労

や採集活動をおこなう土地やその利用権を有し、特定の名前や紋章を占有する権利を持って

いた。大きな家には50〜60人もの人が住み、家屋にはその家の紋章が描かれた。



氏族や家などの名称や紋章として使われたもは、祖先と特別な関わりがあると信じられている

特定の動植物や自然現象、つまりトーテムであった。彼らの世界観では、すべての動物たちは

種に応じたさまざまな超自然の力を持っており、時に人間の形態をとることもできると考えられ

ていた。トーテムの代表的なものは、ワタリガラス、ワシ、オオカミ、シャチ、クマなどの実在の

動物で、これらは集団や個人のアイデンティティを示すものとして、さまざまなものに描かれた。

そして一族の由来を伝える物語などを示すものでもあった。



万物に霊魂があり、肉体が死んでも霊魂は再生すると信じる人々は、食用に供される「動物

(植物)の人たち」の善意によって人間は生かされていると考えていた。また、漁労、狩猟、採集

などにまつわるタブーや慣習の多くは、動物をはじめとする霊魂と良好な関係を保つための

方法であり、精霊と交信する能力をもつシャマンが、生業の成否、病気の治癒、天候の制御

などをつかさどると考えた。シャマンの衣装やラトル(がらがら)などの儀式の道具には、その

力を強める補助霊などが描かれることも多かった。



生業活動の休止期になる冬は、儀式もおこなわれる季節であった。とくに中部地域では、神話

の劇化が発達しており、秘密結社に加入する人びとによって仮面劇が演じられた。仮面や衣装

をはじめとする小道具が用意され、入念な稽古がおこなわれた。人びとの目には、演者が精霊

に憑依され、奇跡をおこなっているように見えたという。



こうした儀式は、超自然的な力の存在を確信させるものであった。冬にはポトラッチと呼ばれる

儀礼が開催されることも多く、その主催者となるのは、十分な食物と贈り物を用意できる首長層

であった。客を招き、莫大な富を誇示して気前よく分けることで、出席者に感動を与え、それが

名声を高めることにつながった。首長の衣装や持ち物は、とくに腕のよい者に作らせていたた

め、洗練された手の込んだ逸品が残されている。




 


目次

ご挨拶 須藤健一

カナダ文明博物館巡回展開催にあたって ビクター・ラビノビッチ

自然と生命を尊ぶ共生の思想・・・・カナダ先住民の環境、歴史、そして生きかた 岸上伸啓


1 多様な環境から生まれる美のかたち
カナダ文明博物館所蔵コレクション・・・・エルドン・イエローホーン(翻訳・編集 伊藤敦規)

ハンターと戦士の世界・・・・平原地域と高原地域

五大湖周辺の農耕民の世界・・・・東部森林地域

極限に生きる人びとの世界・・・・極北地域と亜極北地域

サケと儀礼の民の世界・・・・北西海岸地域

カナダ文明博物館の歩みと現代カナダ先住民との関係
地質調査団から知識の協働管理施設へ
J−L・ピロン、N・プリンス、I・ディック、A・ラフォレ
(翻訳・責任編集・部分執筆 伊藤敦規)



2 アートにみる先住民の活力・・・・国立民俗学博物館コレクション

イヌイット・アートの世界・・・・「変身の美学」のダイナミズム 大村敬一

北西海岸先住民のアートの世界・・・・「象徴の森」のルネッサンス 斎藤玲子

大地と近代世界システムのはざまに生きる・・・・カナダ・イヌイットの歴史と現代
スチュワート・ヘンリ(本多俊和)

植民地支配が豊かな階層社会にもたらしたもの 北西海岸先住民の歴史と現状 立川陽仁

民博所蔵の北米北部先住民資料について 小谷凱宣

カナダ先住民版画の原点 田主誠



3 変化を遂げる先住民社会

激変の45年・・・・カナダ・イヌイット再訪 武田剛

北西海岸先住民族の100年の変化 岩崎グッドマン・まさみ

神話の記憶・・・・カナダ北西海岸の旅にて 赤坂友昭





 


2012年3月22日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。



奄美にいたときの私。

長崎・佐世保で生まれ、3歳の時に私たち家族は奄美に移り住んだ。



佐世保の近くに黒島という隠れキリシタンが住んだ島がある。成人してからこの島と黒島天主堂

訪れたときの衝撃とそこで与えられた意味は私の大切な自己基盤の一部になっている。



そして奄美大島、そこはシャーマニズム・アニミズムの世界観が残る地であった。幼少の頃はそん

なことなどわかるはずもなく、青く澄んだ海、赤い蘇鉄の実、さとうきび、そして怖い毒蛇ハブが住む

森を身近に感じていた。



「一人で森に入ってはいけない」と何度も言われた。それ程ハブが棲む森は子供にとって恐ろしい

場であった。逆に言うとハブがいたからこそ、昔の奄美の森は人間によって荒らされずに生き残っ

てきたのかも知れない。



ホピ族の有名な踊りに「蛇踊り」がある。砂漠に住む猛毒をもつガラガラヘビなどを多く集め、儀式

するのだが、その儀式の前に長老達は一つの部屋にこれらの蛇を置いて数日間共に過ごすので

ある。そして儀式が済むと蛇たちは丁重に元の砂漠に帰される。



確かに日本でも蛇信仰はあったと思う。母の実家・久留米の家では白蛇がおり家の人たちは大切に

その蛇を扱っていた。私は白蛇を見たことはないのだが何度もその話を聞いて育った。



創世記で蛇がイブを誘惑したことから生じてきたずる賢い悪魔の存在としての意味、そして蛇信仰が

残る地や奄美、両者には決定的な自然観・世界観の違いが横たわっていると感じていた。



前者からは人間だけによる地球支配の夜明けが始まり、自然に対しての畏敬を失い森を切り開い

た姿が、後者からは脱皮を繰り返す蛇に、森の再生のシンボルとしての意味を見い出せるかも知

れない。



良くキリスト教は一神教と言われるが、私はそうは思わない。父・子・聖霊の3つの姿が互いに与え

尽くしている姿、三位一体はそのことを指し示しているのではないかと思う。



言葉では偉そうに「与え尽くす」と簡単に言うことは出来るが、それを肌で知り、示すことは私には

出来ない。インディアンの「ポトラッチ」縄文時代での社会的緊張を緩和するために呪術的儀礼や

祭を通して平和で安定した平等主義、「与え尽くし」の社会。



ある意味でキリスト教の真実の姿を体現しているのが先住民族たちなのかも知れないと思うことが

ある。



まだまだ多くの疑問が私の中に横たわっているのだが、長崎・奄美から旅立った私の魂は、ブーメ

ランのように再びこれらの地に戻ろうとしているのかも知れない。



☆☆☆☆



「ガラガラ蛇からサイドワインダー、ヤマカガシまであらゆる種類の蛇がおった。

六〇匹はいたじゃろう。あちこちに動き回って、囲んでいる男たちの顔を見上げ

ていた。男たちは動かず、優しい顔つきで歌っているだけじゃ。すると、大きな

ガラガラ蛇が一人の老人の方に向かい、足をはい登り、そこで眠り始めた。

それから次々と蛇がこの老人に集まり、優しそうな顔をのぞき込んでは眠り始

めたのじゃ。蛇はこうやって心の清い人間を見分けるのじゃよ。」



コアウィマ(太陽を反射する毛皮)の言葉

「ホピ・宇宙からの聖書」フランク・ウォーターズ著より引用



☆☆☆☆



(K.K)



 







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