Suffolk Chess: December 2012

クラブのメンバーと同時対局をしたヴェラ・メンチク。結果は18勝1敗4分だった。






Nonne allo sbaraglio! | SoloScacchi
(右がヴェラ・メンチク)





Vera Menchik ヴェラ・メンチク 1906-1944



女性棋士を紹介するにあたり、このヴェラ・メンチクの存在は現在でも光り輝いている。

チェコ人の父、イギリス人の母を持ったメンチクはモスクワで生れ、15歳の時に家族と

共にイギリスに移住する。



その強さは女性の中では圧倒的なもので、1927年から39年にかけての7回にわたる

女性チェス世界選手権では78勝し負けはたったの1局のみで、初代の女性世界チェス

チャンピオン並びにそのタイトルを生涯防衛し続けた。



特筆すべきは1929年の大会において、わずか0.5ポイント差でカパブランカに次いで強豪

ルービンスタインと2位を分け合い、また世界チャンピオンのエイベや天才レシェフスキー

など倒した真の実力者だった。



1944年という第2次世界大戦の中、38歳のメンチクは、ドイツのV-1ロケット攻撃の空襲

により亡くなるが、彼女の偉業を称えて、チェスオリンピックで優勝した女性チームに対し

て「ヴェラ・メンチク・カップ」が贈られるようになっている。



彼女の存在がチェスをする女性にとってどれほどの大きな希望と勇気になったであろう。

メンチクが残した遺産は偉大だったのである。








メンチクがカパブランカに次いで、ルービンスタインと共に2位になった大会の棋譜集

Ramsgate 1929 team tournament


Capablanca, Jose Raul  5.5 
Rubinstein, Akiba 5.0 
Menchik, Vera  5.0 
Maroczy, Geza  4.5 
Koltanowski, George  4.5 
Soultanbeieff, Victor Ivanovich  4.0 
Thomas, George Alan  3.5 
Znosko Borovsky, Eugene  3.5 
Yates, Frederick  3.0 
Michell, Reginald Pryce  2.5 
Tylor, Theodore  2.5 
Sergeant, Edward G  2.0 
Winter, William  2.0 
Price, Hubert Ernest  1.5 


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ヴェラ・メンチクの名局



Vera Menchik vs George Alan Thomas
London (1932) · King's Indian Defense: Saemisch. Orthodox Variation (E85) · 1-0




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Vera Menchik vs Edgar Colle
"Vera Few Mistakes" (game of the day Jul-28-04)
Paris 1929 · Nimzo-Indian Defense: Normal Line (E40) · 1-0




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Frederic Lazard vs Vera Menchik
"From Russia With Love" (game of the day Jun-10-06)
Paris 1929 · Bird Opening: From Gambit (A02) · 0-1




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Vera Menchik vs Eero Einar Book
"Of Mice and Menchik" (game of the day Jan-30-08)
Margate (1938) · Semi-Slav Defense: General (D43) · 1-0




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Vera Menchik vs George Alan Thomas
"A Lady's Touch" (game of the day Apr-17-05)
Podebrady (1936) · Slav Defense: Modern Line (D11) · 1-0




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Mir Sultan Khan vs Vera Menchik
"Insultin' Khan" (game of the day May-22-05)
Hastings 3132 1931 · Queen's Gambit Declined: Exchange Variation (D35) · 0-1




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メンチクが、4年後に世界チャンピオンになるエイベに勝利した局

Max Euwe vs Vera Menchik
"Join the Club" (game of the day Jul-10-11)
Hastings 1930/31 (1930) ·
Queen's Gambit Declined: Orthodox Defense. Henneberger Variation (D63) · 0-1




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メンチクがレシェフスキーに勝利した局

Samuel Reshevsky vs Vera Menchik
Yarmouth 1935 · Queen's Gambit Declined: Modern. Knight Defense (D51) · 0-1




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Vera Menchik vs Sonja Graf-Stevenson
"It Was a Vera Good Year" (game of the day Jul-14-09)
Semering 1937 · Semi-Slav Defense: Bogoljubow Variation (D46) · 1-0




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メンチクがカパブランカに敗れた名局。
Vera Menchik vs Jose Raul Capablanca
Hastings 1930/31 (1931) ・ Indian Game: Capablanca Variation (A47) ・ 0-1




「いちばん学べる名局集」アーヴィング・チェルネフ著 水野優訳では、この試合の詳しい

解説がされています。「芸術的なピース交換・・・本局には、特段の見せ場がないようだが、

全局を並べるのは楽しい。そこには、カパブランカの驚くべきテクニックの興味深い側面が

見られる。最もありきたりな手順から有利さを引き出す天賦の才能が。本局を例に取ると、

メンチク女史が、できるだけ多くのピースを交換してドローに持ち込もうとする。この単純化

する試みを避けるどころか、カパブランカは交換を歓迎し、交換するたびに少しずつ有利な

局面に変えていく。ピースがほとんどなくなる頃には、彼の陣形的な優位がポーン1個分以

上になっている。カパブランカには、どんな終盤戦も簡単そうに見せる比類なき能力がある

ので、余分のポーン1個あれば十分だし、本局の終盤戦での彼の勝ち方を見るのは楽し

い。」・・・本書より抜粋引用




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ヴェラ・メンチクとマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)



ヴェラ・メンチクの全棋譜

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Chessgames.com


Chess Notes by Edward Winter

前列、左から2人目がカパブランカ、その隣がメンチク、ラスカー 1935年




2013年2月5日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 



ヴェラ・メンチク(1906-1944)・写真は他のサイトより引用



現在でも光り輝く星・ヴェラ・メンチク、彼女はチェスの世界チャンピオンを倒したこともある実力を持ちながら、

第二次世界大戦のドイツの空爆により、38歳で亡くなる。



上の写真はメンチク(前の女性)がクラブの23人のメンバーと同時対局(18勝1敗4分け)した時の写真である

が、彼女の偉業を称えて、チェス・オリンピックでは優勝した女性チームに「ヴェラ・メンチク・カップ」が現在に

至るまで贈られている。



彼女のような輝く女性の星が再び現われるには、ユディット・ポルガー(1976年生まれ)まで70年もの年月が

必要だった。チェスの歴史上、数多くの神童や天才が出現したが、その中でもひときわ輝いていた(人によっ

て評価は異なるが・・・)のがモーフィー(1837年生まれ)、カパブランカ(1893年生まれ)、フィッシャー(1943年

生まれ)である。



他の分野ではわからないが、このように見ると輝く星が誕生するのは50年から70年に1回でしかない。



20世紀の美術に最も影響を与えた芸術家、マルセル・デュシャン(1887年~1968年)もピカソと同じく芸術家

では天才の一人かも知れない。1929年、メンチクとデュシャンは対局(引き分け)しているが、デュシャンは

チェス・オリンピックのフランス代表の一員として4回出場したほどの実力を持っていた。



「芸術作品は作る者と見る者という二本の電極からなっていて、ちょうどこの両極間の作用によって火花が

起こるように、何ものかを生み出す」・デュシャン、この言葉はやはり前衛芸術の天才、岡本太郎をも思い出

さずにはいられない。世界的にも稀有な縄文土器の「美」を発見したのは岡本太郎その人だった。



「チェスは芸術だ」、これは多くの世界チャンピオンや名人達が口にしてきた言葉だ。この言葉の真意は、私

のような棋力の低い人間には到底わからないが、それでもそこに「美」を感じる心は許されている。



メンチクの光、芸術の光、それは多様性という空間があって初めて輝きをもち、天才もその空間がなければ

光り輝くことはない。



多様性、それは虹を見て心が震えるように、「美」そのものの姿かも知れない。










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