ESO Photo Release: Orion in a New Light - VISTA exposes high-speed antics of young stars
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の可視光・赤外線望遠鏡「VISTA」が、地球から約1350光年の
距離にあるオリオン座大星雲(M42)を赤外線で見通した姿だ。このオリオン座大星雲は巨大
な星のゆりかごなんだけれど、赤外線の目を通すとこのような鮮やかな姿が映しだされるん
だね。勿論、普通の望遠鏡や双眼鏡でもその美しさは特筆すべきものだけど、ただこのよう
な可視光で見えるものはガスやちりのほんの一部でしかない。しかし赤外線の目を通して深
いちりを見通すことによって、多くの若い星の存在と、その活発な活動が周囲に及ぼす影響
を捉えることが出来るんだ。このオリオン座大星雲のまた異なった姿を下に紹介しよう。
ヨーロッパ南天天文台のパラナル観測所 (南米チリ) の8.2メートル望遠鏡「VLT ANTU」
と、赤外線カメラ「ISAAC」によりとらえられたオリオン大星雲の中心部の姿
ESO Press Photos 03a-d/01 (2001.01.17)
Gemini Observatory Image Release
The
Delicate Trails of Star Birth - Gemini's Laser Vision Reveals Striking New
Details in Orion Nebula
ハワイ・マウナケア山のジェミニ北望遠鏡が、オリオン座大星雲(M42)の
中を超音速で飛び抜けるガスの塊とその航跡を鮮明にとらえた画像だよ。
このガスは、秒速400キロメートルでオリオン座大星雲の中を突き抜けて
いる。ガスの先端部分で青く輝いているのは、衝撃波によって摂氏約
5000度に加熱された鉄の原子で、ガスが通り抜けたところは分子状態の
水素が約2000度に暖められ、オレンジ色の航跡を残している。この航跡
は0.2光年もの長さに達し、このガスの弾丸が放出されてからまだ1000年
も経っていないと考えられている。
APOD: 2018 March 7 - Arcs, Jets, and Shocks near NGC 1999
左下の「NGC 1999」を拡大した画像が下。
APOD: 2013 November 28 - NGC 1999: South of Orion
反射光星雲(NGC1999)
これは地球から約1500光年の距離にあるオリオン座に位置する反射光星雲という有名な 星雲だよ。この星雲がどうして明るく輝いているのかわかるかな。星雲自体が発光していると 考える人もいるかも知れないね。でも実はこの星雲の真中に輝いている恒星に照らされて輝 いているんだよ。街灯のまわりの霧が輝いて見えるのと同じだね。この明るい恒星はオリオン V380という星で、太陽の質量の3.5倍もあり、表面温度が太陽の2倍の摂氏一万度もある んだ。だからこの恒星は白く輝いて見えるんだ。そしてこの星はとても若い星で、形成期に残さ れた物質の雲に取り囲まれている。この雲には画像で明るく光っているものと、画像中心に Tの文字を横にしたような暗黒雲の二つが見えるね。この暗黒雲は「ボークの胞子」と呼ばれ たものの一つで、ガスや分子やチリから成る低温雲で、背後から来る光を全て遮ってしまうほ ど非常に密度が高い雲と考えられていたんだ。しかし、ESAの赤外線天文衛星「ハーシェル」 が2010年5月に観測したところによると、この穴の部分はガスやちりによって光が遮られてい るのではなく、空洞になっていることが明らかとなったんだ。若い星から噴き出すジェットがガス やちりを貫通して出来たものかも知れないし、近くに存在する成熟した星からの強力な放射の 影響もあるのかも知れない。いずれにしろ新しい星の誕生の際に周囲のガス雲を失ってしまう 様子をとらえた、重要な発見になるだろうと言われている。最後に、何故この反射光星雲が有名 な存在になったかの最大の理由が、この星雲のすぐ隣で初めて発見されたハービック・ハロー 天体という存在だったんだ。この天体は生生まれたばかりの原始星からのガス・ジェットを特徴 とし、その存在をここに見つけたんだよ。この星雲の位置は下の星図を参考にしてごらん。そし てこの星雲の上にある有名なオリオン星雲の画像(下の画像)が、日本のすばる望遠鏡やヨー ロッパ南天天文台でも撮影されている。そしてこのオリオン座を題材にして書いた散文詩が 「星夜の調べ」なんだ。
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ESA: Herschel finds a hole in space
ESAの赤外線天文衛星「ハーシェル」が捉えた画像の左上の白い雲をハッブル
宇宙望遠鏡が拡大して捉えた姿。
「沖縄の宇宙像」より抜粋引用 オリオンの三ツ星は、古代から東をしめす重要な星であった。三ツ星は地平から天界へ 昇るときには縦一列になって正確に真東から昇ってくる。また沈むときには横一列になって 真西に沈む島の人々は春分や秋分の太陽によらずとも、この星をもとにして正確なアガイ すなわち真東の位置を割り出していた。ストーンサークルの研究からもわかるように、古代 の人々の方位観は曖昧どころか現代のわれわれ以上に正確で、深く信仰と関係していた。 この点は沖縄でもまったくおなじである。大和岩雄は『神々の考古学』のなかで、大阪の住 吉大社で祀られている三神もオリオンの三ツ星であるという野尻抱影の話を紹介している。 「野尻抱影は、住吉大社の筒男三神が、『次ぎ次ぎと海から生まれたとする神話は、ミツボシ が直立して、一つ一つ海から現れる姿をしきりに思わせる。現在でも諸地方の猟師は、ミツ ボシを土用一郎、二郎、三郎と呼び、三日にわたり、沖から一つずつ昇ると言っている』と書 いている。草下英明も、オリオン座の『三つ星の右はじの星は、ちょうど天の赤道の真上に 位置をしめているので真東からのぼって真西に沈んでゆく。そして三つ星は東の空をのぼる ときはたて一直線となってじりじりとせりあがってくる。西にまわると横一直線になって一気に 沈んでゆく。したがって三つ星の位置によって東西の方角を判定することもできる』と書いて いるが野尻も『三つ星は天の赤道に位置して、正しく東から昇り、正しく西に入るので、海上 ではアテ星である』と書いている。航海にとって特に重要な星であったから、筒男三神(三つ 星)がまつられたのであろう」 ミツボシを土用一郎、二郎、三郎の三兄弟と呼ぶ点は、池間 島でナイカニ神を三兄弟と呼ぶのと共通していて興味深い。また航海安全の神とする点も 共通している。エジプトではキザの三大ピラミッドがこの三ツ星をあらわしていることは定説 で、古代よりこの三ツ星が天界に昇る道筋をしめす神としての非常に重要な意味を持ってい たことが理解できる。
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Spitzer Newsroom: Baby Stars Hatching in Orion's Head
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが撮影した「バーナード30」。オリオン座の
頭のところに位置する「バーナード30」は、同じオリオン座の有名なM42とは違い
目に見える光では目立たないが、赤外線の目で見るとこのような美しい姿が現れ
る。緑は特殊な炭化水素の分子、赤茶色はちり、ピンク色に輝いている星は産ま
れたばかりの赤ちゃん星だよ。この領域には褐色矮星(恒星として輝くほど質量
を集められなかった天体)や、質量が大きな星、小さな星が集まっており、研究者
にとっては宝の山的な存在なんだ。
APOD: 2005 August 3 - The Busy Center of the Lagoon Nebula
European Homepage for The NASA/ESA Hubble Space Telescope: News Release: Breaking Waves in the Stellar Lagoon
2010年9月、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が捉えた干潟星雲(M8)の中心領域だ。
この干潟星雲(M8)は、いて座の方向約4000〜5000光年の距離にあるんだけど、
若い星からの強烈な放射によってガスやちりの雲が侵食されたり拡散させられた
りしている姿は実に美しいね。この星雲の名前は、星雲を横断するちりの筋(暗黒
星雲)が干潟のように見えることから名付けられたんだけど、その大きさは約100光
年の広がりを持つんだ。画像の中で赤黒く見えているところは、水素ガスの雲がゆっ
くりと収縮し新たな星が生まれ、その誕生した星からの紫外線によって照らされてい
るんだよ。また渦を巻く煙や岸辺のように見えるのは、紫外線放射によってガスが
侵食されたり拡散させられたりしていることによるんだ。実はこの干潟星雲の観測
から、ガス雲から原始星へ物質が降着して星形成が進んでいることを示す確証が
得られているんだ。 (大きな画像)
APOD: 2011 May 11 - The Southern Cliff in the Lagoon
APOD: 2008 July 15 - Gas and Dust of the Lagoon Nebula
APOD: 2014 September 24 - The Lagoon Nebula in Stars Dust and Gas
M8 (大きな画像)
(映し出されるまで時間がかかる場合があります)