APOD: 2008 July 19 - M16 and the Eagle Nebula
羽を広げたような姿からわし星雲の名で親しまれている天体である散光星雲M16
は、7000光年という近い距離にあるんだ。上の写真のように水素分子やチリで
できた高さ1光年にも及ぶ柱が何本もあるんだよ。チリと言ってもその大きさは
1万分の1mm位しかない小さなもので、大きなビルに一個あるかないかという密
度なんだけど、それでもこの星間塵はこんな壮大な眺めを作るんだね。この柱の
内部には特に密度が高い「EGG」と呼ばれる球状のガス塊があり、いずれ星として
輝き始めるんだ。このM16(NGC6611)は、へび座(尾部)とたて座の境界、さそ
り座に近いところにある有名な星雲なんだ。7x50の双眼鏡では星雲状に見え、
すぐ南のM17が同一視野に見え、天の川の微光星とともに美しい眺めを楽しむ
ことが出来るから、一番下の星図を参考にして探してごらん。大きな望遠鏡でも
中々輪郭がはっきりせず、写真撮影でしかこの美しい色を見ることが出来ないと
思うから、双眼鏡で観望した方がいいかもしれないね。
この画像の上方には新しく生まれた青い星があり、その星の強烈な紫外線が薄い
ガスを飛散させ濃い部分だった柱を残してしまったんだ。この星間ガスの柱は、
星を産み出す母親の胎内のようなものなんだ。この上の画像はもっとも大きな柱の
頭部で、柱の後方にはやはり生まれたばかりの星があって背景照明になっている
んだよ。気が遠くなるほどの時空の中で星が産まれてゆくんだね。さてこのM16に
似た構造を持っているものに有名な「馬頭星雲」がある。地球から1400光年離れ
たオリオン座にある暗黒星雲で、ESO(ヨーロッパ南天天文台)パラナル観測所の
8.2m VLT(The Very Large Telescope)望遠鏡を使って撮影されたものなんだ。
それにしても何と美しく雄大な光景なんだろう。
へび座にあるM16の右に見えるのがへびつかい座だよ。もともとはこの二つの
星座は一つの星座だったと言われているんだ。医学の神アスクレピオスが持っ
ているのがこのへびなんだね。そしてM16の下に見えているのが銀河系の中心
がある射手座で、その下に見えているのが皆も知っているさそり座だよ。左上
にある一等星のアルタイルが輝くわし座だ。この四つの星座の真ん中あたり
にM16があるんだ。へびと言うと邪悪なものとして受け取られがちだけど、先住
民の方たちや古代メソポタミアの人にとっては神聖な生き物だったんだよ。
詳しくは「森を守る文明 支配する文明」や「魅せられたもの・霊的な戦士」を
読んでみてごらん。
ハーシェル宇宙望遠鏡
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の「ハーシェル宇宙望遠鏡」が写した広範囲の
わし星雲の姿だ。これは遠赤外線でとらえたもので、可視光線や近赤外線
では暗く見えていたところが明るく写しだされ、若い星がどこにあるのか、
わし星雲の中で何が起こっているのかが見えてくるんだ。中央やや下に最
初の写真で見られる柱が見えると思う。
Spitzer News Room: Famous Space Pillars Feel the Heat of Star's Explosion
2007年1月、赤外線天文衛星スピッツァーによるM16「わし星雲」の観測から、
ハッブル宇宙望遠鏡の画像で有名な暗黒星雲の柱が、実は今この瞬間には存在
しない示唆されたんだ。この星雲までの距離は7000光年、つまり私たちが見て
いるのは7000年前の姿だね。この画像は複数の波長の赤外線でわし星雲を撮
影したもので、広がりゆく衝撃波によってガスが加熱されているところが赤く写っ
ている。中央付近にはあの有名な3本柱も見えるが、今現在では致命的な爆発
による衝撃波が3本の柱を吹き飛ばしているのではないかと言われているんだ。
早ければ1000年後にこの柱が崩壊される様子が見えるかも知れない。
キットピーク天文台にある国立科学財団の90cm望遠鏡にNOAOのモザイクCCDカメラを
取り付け撮影されたM16の広角画像だよ。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した最初の2枚は
この画像の中心部(白いところ)だけど、この画像はM16の広範囲を撮影しているもので、
そのあまりの美しさに言葉を失いそうだね。NOAO The Eagle Nebula, M16
HubbleSite newscenter Newsdesk:
Hubble
Celebrates 15th Anniversary with specutaclar New Images
この画像もM16を撮影したものだ。ちょっと薄気味悪いけど高くそびえる塔の
ようなガス雲が見えるね。この高さは9.5光年、あるいは90兆キロメートルで、
なんと太陽からもっとも近い恒星までの2倍の距離もあるんだよ。ガス雲は
冷たい水素から出来ていて、この中から新しい星が産まれてくるんだけど、
雲の塔部分は近くにある若く高温の大質量星が放つ紫外線によって、侵食さ
れてしまっているんだ。 (大きな画像)
Spitzer Newsroom: Generations of Stars Pose for Family Portrait
画像にぽっかり穴が開いたように見えるところに青く輝いている星は、最も古く
質量の大きな恒星なんだ。また新たに誕生した恒星や、手前や奥にある無関係
の恒星たちも青く光っている。このぽっかり穴が開いたような空洞の周縁部で
見られる雲のような形状の先端には、若い恒星がありピンク色の光っている。
この空洞の中の赤い部分が熱いガス、下の緑のところが濃い星間物質がある。
そして今まさに恒星が誕生しているところが、白く見えるところなんだ。実は
空洞のやや右下に輝く星は、数百万年もすると大爆発を起こし、その時には
せっかく産まれた周囲の若い星も巻き込んで破壊してしまうと考えられている。
尚、このW5はカシオペア座の方向6500光年の距離にあり、見かけ上は満月
4個分のすごい広がりをもつものなんだ。 (大きな画像)
APOD: 2007 December 15 - Mountains of Creation
ESO Press Releases: On the Trail of a Cosmic Cat
2010年1月、ラ・シーヤ天文台の2.2m望遠鏡がとらえたNGC 6334は、日本では
「出目金星雲」、英語では「Cat's Paw Nebula(猫の手星雲)」と呼ばれている。
この直径50光年の星雲はさそり座の方向約5500光年の距離に位置しており、
イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルが1837年に最初に記録したものな
んだ。何故星雲が赤いのだろう。それは青や緑色の光は星雲と地球の間にある
物質によって散乱されたり吸収されてしまうからなんだ。この赤い光はこの星雲
にある水素ガスが高温の若い星からの放射で輝いており、天の川銀河の中で
もっとも星形成が活発な領域のひとつなんだ。年齢が数百万歳と非常に若く質量
が太陽の10倍ほどの青く輝く星が数万個存在すると考えられており、この赤い
星雲の奥深いところに隠れているんだよ。
APOD: 2008 March 4 - NGC 6334: The Cats Paw Nebula
European Homepage for The NASA/ESA Hubble Space Telescope: News Release:
Vampires and
collisions rejuvenate stars
これは球状星団と呼ばれるもので、その年齢は90億から150億光年と考えられ、数万
から数百万個の年老いた星の集まりのことを言うんだ。でもどうしてこんなに青く輝いて
いるんだろう。普通、球状星団は年老いた星特有の赤く輝くのに対して、このM30の
球状星団は、まるで生まれた星たちがたくさん輝いている。1950年代の初め、球状
星団の中に「青色はぐれ星(blue straggler)」が発見されたんだけど、それを研究する
ために、地球から約2万8000光年の距離に位置している、やぎ座の球状星団M30を
観測したんだ。その結果だけど、今から10億から20億年前にM30の星が中心に集ま
り、急激に星の密度が高くなったらしい。そして星同士の衝突が増え、連星系のガス
の移動も起きやすくなったため若く青く輝く星たちが産まれてきたと考えられている。
宇宙は絶えず生まれ変わっているんだね。
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