「最後の楽園」

星野道夫 写真・文 PHP研究所より引用











星野道夫氏の写真には不思議な魅力がある。それはそれぞれの写真の中の

生きものがまるで自分という存在の隣にあり、その鼓動が見る者の心に響いて

くるような錯覚を覚えることにある。きっとそこには撮るものと撮られるものとの

間に何らかの、言葉では言い表せない共通する息吹が横たわっているからな

のかも知れない。

(K.K)





目に見えるものに価値を置く社会と、

見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。

そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった。


見ることと、理解することは違う。

たとえぼくが餌付けをしてグレーシャーベアをおびき寄せても、

それは本当に見たことにはならない。

しかし、たとえ眼には見えなくても、木や、岩や、風の中に、

グレーシャーベアを感じ、それを理解することができる。

あらゆる神秘が壊され続けてきた今、

見えなかったことはまた深い意味を持っているのだ。





混沌とした時代の中で、

人間が抱えるさまざまな問題をつきつめてゆくと、

私たちはある無力感におそわれる。

それは正しいひとつの答えが見つからないからである。

が、こうも思うのだ。

正しい答えなど初めから存在しないのだと・・・・。

そう考えると少しホッとする。

正しい答えをださなくてもよいというのは、なぜかホッとするものだ。

しかし、正しい答えは見つからなくとも、その時代、時代で、

より良い方向を模索してゆく責任はあるのだ。


壮大なアラスカの自然は、

結局人間もその秩序の中にいつか帰ってゆくという、

あたり前のことを語りかけてくる。



星野氏の著作「イニュニック(生命)」「Alaska 風のような物語」「旅をする木」「長い旅の途上」

「星野道夫の仕事 第1巻 カリブーの旅」「星野道夫の仕事 第2巻 北極圏の生命」

「星野道夫の仕事 第3巻 生きものたちの宇宙」「星野道夫の仕事 第4巻 ワタリガラスの神話」

「オーロラの彼方へ」「ラブ・ストーリー」「森に還る日」

また同じく極北の大地とそこに生きる先住民族を描いたリチャード・ネルソンの

「内なる島 ワタリガラスの贈りもの」も参照してください。







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