「オーロラの彼方へ」
星野道夫 写真・文 PHP研究所より引用
アラスカという原始の姿が残された極北に近い場所にひかれ続けた著者の 魂を揺さぶる言葉や未発表の写真。オーロラ、北極熊などそれぞれの写真が 彼の言葉と共に大自然の営みを語りかけてくる。 (K.K)
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2012年1月29日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 |
本書より引用
ぼくは、“人間が究極的に知りたいこと”を考えた。一万光年の星のきらめきが 問いかけてくる宇宙の深さ、人間が遠い昔から祈り続けてきた彼岸という世界、 どんな未来へ向かい、何の目的を背負わされているのかという人間の存在の意 味・・・・・そのひとつひとつがどこかでつながっているような気がした。けれども、 人間がもし本当に知りたいことを知ってしまったら、私たちは生きてゆく力を得る だろうか、それとも失ってゆくのだろうか。そのことを知ろうとする想いが人間を 支えながら、それが知り得ないことで私たちは生かされているのではないだろ うか。
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本書より引用
ある夜、友人とこんな話をしたことがある。私たちはアラスカの氷河の上で 野営をしていて、空は降るような星空だった。オーロラを待っていたのだが、 その気配はなく、雪の上に座って満天の星を眺めていた。月も消え、暗黒の 世界に信じられなぬ数の星がきらめいていた。時おり、その中を流れ星が長 い線を引きながら落ちていった。「これだけの星が毎晩東京で見られたらす ごいだろうなあ・・・・・夜遅く、仕事に疲れた会社帰り、ふと見上げると、手が 届きそうなところに宇宙がある。一日の終わりに、どんな奴だって、何かを考 えるだろうな」 「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。た とえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。 もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝える かって?」 「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンパスに描いて見せ るか、いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」 「その人はこう言ったんだ。 自分が変わってゆくことだって・・・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変 わってゆくことだと思うって」 人の一生の中で、それぞれの時代に、自然は さまざまなメッセージを送っている。この世へやってきたばかりの子どもへも、 去っていこうとする老人にも、同じ自然がそれぞれの物語を語りかけてくる。
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星野氏の著作「イニュニック(生命)」、「Alaska 風のような物語」、「旅をする木」、「長い旅の途上」 「星野道夫の仕事 第1巻 カリブーの旅」、「星野道夫の仕事 第2巻 北極圏の生命」、 「星野道夫の仕事 第3巻 生きものたちの宇宙」、「星野道夫の仕事 第4巻 ワタリガラスの神話」 また同じく極北の大地とそこに生きる先住民族を描いたリチャード・ネルソンの 「内なる島 ワタリガラスの贈りもの」も参照してください。
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