「星野道夫の仕事 第1巻 カリブーの旅」
星野道夫 写真・文 池澤夏樹 解説 三村淳 構成
朝日新聞社より
本書より引用。
私たちが生きてゆくということは、 誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、 終わりのない日々の選択である。 生命体の本質とは、他者を殺して食べることにあるからだ。 近代社会の中では見えにくいその約束を、 最もストレートに受けとめなければならないのが狩猟民である。 約束とは、言いかえれば血の匂いであり、 悲しみという言葉に置きかえてもよい。
私たちはある風景に魅かれ、特別な想いをもち、時にはその一生すら賭けてしまう。 風景とは、ひとつの山であったり、美しい川の流れであったり、 その土地を吹き抜けてゆく風の感触かもしれない。 それをもし自然と呼ぶならば、 人間がどれだけ想いを寄せようと、相手はただ無表情にそこに存在するだけである。 私たちの前で季節がめぐり、時が過ぎてゆくだけである。
星野氏の著作「イニュニック(生命)」、「Alaska 風のような物語」、「旅をする木」、 「森と氷河と鯨」、「長い旅の途上」、「オーロラの彼方へ」、「ラブ・ストーリー」、「森に還る日」
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