「魂の指導者 クロウ・ドッグ」スー族メディスンマンの物語
レオナルド・クロウ・ドッグ/リチャード・アードス著
伊藤由紀子訳 サンマーク出版より
四代にわたるスー族メディスンマンのクロウ・ドッグの物語だが、現在の レオナルド・クロウ・ドッグが歩んだ苦難の道が主に書かれている。1890 年に大虐殺が行われたウンデッド・ニー(サウスダコタ州、パインリッジ居 留地)においての占拠事件では、1960−1970年代を駆け抜けたアメリ カ・インディアンの人権回復運動の中で、虐げられてきた多くのインディ アンが誇りと名誉を取り戻すべく立ち上がり、レオナルド・クロウ・ドッグも 霊的な指導者として加わることになる。この中には「聖なる魂」を記した デニス・バンクスやレオナルド・クロウ・ドッグの妻となる「ラコタ・ウーマン」 のマリー・クロウ・ドッグがいた。1973年に起こったこの占拠事件までの インディアンが置かれた状況は屈辱的なもので、白人が面白半分でイン ディアンを殺しても犯人が刑務所に行くことは殆どなかった。このような信 じられない状況がつい30年前までアメリカで行われており、現在におい ても形を変えた侵略戦争がインディアンを襲いつづけているのである。詳 しくは「アメリカ・インディアンの現在」、「白人の国、インディアンの国土」 の各文献を参考にして頂けたらと思う。このような悲惨な状況の中でもイ ンディアンの魂を命をかけて守ってきた人びとの壮絶な闘いの記録が 本書であり、このレオナルドの父が有名なレイム・ディアーことヘンリー・ クロウ・ドッグで、「レイム・ディアー」(インディアン魂)は彼の自叙伝。 (K.K)
雑記帳「魅せられたもの」1997.3/6「レイム・ディアー」を参照されたし 「ともいきの思想 自然と生きるアメリカ先住民の『聖なる言葉』」
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本書 訳者あとがき より抜粋引用
「魂の指導者 クロウ・ドッグ スー族メディスンマンの物語」は、四代にわたって引き 継がれているスー族のメディスンマン、つまり霊的指導者クロウ・ドッグたちの物語で す。四代目クロウ・ドッグは今でも生きていて、昨年夏にもクロウ・ドッグ・パラダイスで 大規模なサンダンスを開き、日本からも何人かが参加したようです。文字通り、“ミタク エ・オヤシン”に代表されるインディアン魂というか、哲学というか、日本人の間でも関 心が高まっているのを感じます。インディアンたちが待ち焦がれてきた、カーペットがめ くられて、下から緑豊かな、調和のとれた大地が再び現れる時が近づいているのでしょ うか。この本は口伝えなので、話題が時々あちこちに飛ぶことがあります。ひとつの話 をしている途中で、やおらほかの話題を思い出して、“そうそう、そういえば、こういうこ ともあったっけ”という具合です。また、人の名前、しかもひとつの文章になっているよう な長い名前がたくさん出てきます。インディアンは皆“ミタクエ・オヤシン”、家族、兄弟 姉妹ですから、出てくる人も多いのです。読者の中には、混乱したり、読みにくいと感じ る人もあるかもしれませんが、これもひとつの文化です。完璧に理解しようとせず、彼ら 特有の話のテンポというか、リズムというか、流れを楽しんでもらえたらと思います。 (中略) 本の後半は、AIM、インディアンたちの公民権運動についてです。白人社会との軋轢を 描いていますが、今もなおインディアン居留地の状況は厳しいようです。一刻も早く、多く の人が一人ひとり心の目を開いて、自分の心の中にある居留地の柵を溶かしてしまえ るように、心から祈らずにはいられません。私からも“ミタクエ・オヤシン”。 1998年5月 伊藤由紀子
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本書より引用
なんで白人はこの地へやってきたのか。なぜカスター将軍はわしらから 聖なるブラックヒルズを奪ったのか。白人は金に目がないな。金縁の眼 鏡、金時計、金歯。やつらはいつでもあちこち掘り散らかし、なんでも引 きちぎって、掘って掘ってまた掘ってだ。金や銀、そうして高価な宝石を 見つけ出すためにブラックヒルズを荒らし放題にしてくれた。いまだに山 の上の方で巨大な金鉱、ホームステイク鉱山を掘っている。今では金銀 だけでなく、ガス、石炭、石油そしてウラニウムを探している。大きなトラッ クがブラックヒルズから核物質を載せて、ここを通るのを見かけるだろう。 わしらは白人を教育せんといかん。あの人たちは頭がおかしくなってし まったからな。
あの人たちはわしらを血なまぐさい野蛮人と呼ぶ。しかし戦争になると、 突然わしらは善良なインディアンと言われるのだ。「ホレ、銃を取って、 おまえの国のために戦え!」などと言うのだ。そうか、そういうことであれ ばと、わしらの若い男たちがベトナムに行った。戦争にだ。そして何人 かがそこで死んだ。しかし、一体誰の国のために死んだのか。わしらが 戦っていたのは、アボリジニに対する戦争だったのだ。まるでカスター の斥候兵をしていたクロウ族とリー族のようなものだ。白人は目を持っ てはいるが、見えない。耳を持ってはいるが、聞こえない。宇宙の時計、 それは魂の時計だが、とっくに12時を告げている。この時計を正確な 時間に合わせる時だ。静止して、考える時間に合わせる時だ。わしの 声を聞くがいい。武器を作るのはやめよ。そして親戚を作るのだ。世界 中でアロワンピ、親戚づくりの儀式をしよう。気をつけなきゃいけない。 さもないと、いつか銃弾ではかたがつかない時がくる。爆弾でも決着が つかない時が来る。ロケットが海に落ちる時がくる。将軍も上院議員も、 大統領自身もどうしていいかわからない時が来る。蛇を食べるように なるのだ。蛇以外、何もないようになるのだ。
白人のグレート・スピリットは白人の仲間に聖書と辞書をお与えになった。 なぜなら彼らはいつでも忘れるからだ。「十戒」は、殺すなかれ、盗むなか れ、羨むなかれと言っているが、いつだって忘れるのだ。あの人たちは殺 すなかれ、奪うなかれ、嘘をつくなかれという教えをいつでも気をつけて 思い出す必要がある。わしらはいちいち思い出す必要がない。だからわし らには、ああせい こうせいと伝える本など何も必要ないのだ。
レオナルドの父、ヘンリー・クロウ・ドッグ(レイム・ディアー)の言葉 (本書より)
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目次 第一章 私はクロウ・ドッグ 第二章 バッファロー・ハンター 第三章 二つの銃弾と二本の矢 第四章 殺戮 第五章 手をつなぎ、輪になって踊る 第六章 バッファロー・ビルのワイルド・ウェスト・ショーと共に 第七章 自分の言葉で話させてくれ 第八章 芯の強い女 第九章 スピリットが私を選んで、真実の私にしてくれた 第十章 運動に身を捧げた 第十一章 煙のシンボル 第十二章 硝煙のにおいのする町 第十三章 包囲攻撃 第十四章 死ぬにはいい日 第十五章 大襲撃 第十六章 白人の正義 第十七章 鉄の扉の家
訳者あとがき
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2012年4月20日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 |
2012年2月6日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 |